実務の記録
カート内に表示する「あと◯円で送料無料」というバーは、月14.99ドルの有料アプリでのみ使える機能でした。無料プランでは使えず、有効化するには課金が必要な設定になっていました。
そこで、このアプリの費用対効果を試算しました。アプリ代を回収するために必要な「バーがあることで増える買い増し注文」の割合を計算すると、全注文の39%に相当する結果になりました。
一方で、自社のWeb注文は月7〜27件です。バーの有無でAOV(客単価)に統計的な差があるかを検出するには、片側だけで100件以上のサンプルが必要になります。現在のペースでは、その件数に達するまで1年以上かかる計算でした。
つまりこの案件は、「データを見てから決める」という枠組み自体が成立しない案件でした。効果を検証してから判断するという前提が使えないため、月14.99ドルのアプリをやめ、同じ機能を自社サーバー側で描画する30行程度のコードに置き換えました。
置き換える前のアプリ版のバーには、別の問題もありました。金額の3桁区切りがピリオド表記(¥3.180)になっており、「¥」と「円」が重複して表示されていたほか、カート合計が1,800円の状態で「あと1,380円」という実態とズレた数字を出していたこともありました。原因は、入力欄の値を確定前の状態で先読みして計算していたことでした。自作版はサーバー側で計算して描画するため、この種のズレは起きません。
SaaSを使う利点は、自分で保守しなくても機能を使える点にあります。ただし、壊れたまま気づかれない期間が発生しうることも含めて評価する必要があります。検証できない施策については、効果ではなく費用構造で判断するという基準を持つようにしました。