「火曜の午前」という指針を、実際に届いたメールで検証する
メルマガの配信最適化について調べると「火曜の午前」という指針によく行き着きます。しかし、私が2026年7月9日から8月4日までの4週間、D2C・EC・小売ブランドのメルマガを実際に購読して受信日時を数えた実測では、火曜も午前も配信の集中先ではありませんでした。
実測で配信が最も集中していたのは金曜と夜(18〜21時)でした。
本記事では、観測の方法と実測データ、集計の途中で見つかった注意すべきこと、そして自社の運用判断を共有します。
この記事のデータについて(観測の方法と母数)
本記事の数値は、当社が実際にメルマガを購読して集計した一次データであり、業界平均の統計ではありません。
観測の前提:
- 観測期間: 2026年7月9日〜8月4日(約4週間)
- 収集方法: D2C・EC・小売ブランドのメルマガを実際に購読し、受信日時・送信元・件名を台帳に記録して集計
- 台帳全体: 223通・30の送信元ドメイン
- 除外: マーケティング系メディア・ニュースレター配信プラットフォームなど7ドメインを除外
- 分析対象の絞り込み: 登録直後の初回メール(ウェルカムメール)を除き、別々の日に2回以上の定常配信を観測できたブランドに限定
- 分析対象: 11ブランド・定常配信86通(各ブランドの初回メールは除外済み)
- 業種の内訳: 食品EC5社/小売・雑貨4社/アパレル2社
- ブランド名は本記事中で一切開示しません(すべて匿名で扱います)
86通のうち1ブランドだけで40通(47%)を占めています。このため通数をそのまま数えると、1社の配信頻度の癖が全体の傾向であるかのように見えてしまいます。そこで本記事の曜日・時間帯の集計は、通数ではなく「その曜日・時間帯に1回でも配信したブランドの数」=ブランド数ベースで見ています。
配信曜日の実測。最多は金曜、次いで土曜
曜日別に配信したブランド数(全11社中)を数えると、金曜が8社で最多、次いで土曜が6社、火曜・水曜・木曜が各5社、月曜が4社、日曜が3社という順になりました。
| 曜日 | 配信したブランド数 |
|---|---|
| 月 | 4社 |
| 火 | 5社 |
| 水 | 5社 |
| 木 | 5社 |
| 金 | 8社 |
| 土 | 6社 |
| 日 | 3社 |
※11ブランド・4週間の観測にもとづく傾向であり、業界全体の平均値ではありません。
最多配信の1社(86通中40通を占める1社)を除いた10社で数え直しても、月3社・火4社・水4社・木4社・金7社・土5社・日2社となり、金曜が最多という傾向は変わりませんでした。
配信時間帯の実測。夜(18〜21時)が11社中9社
時間帯別に配信したブランド数(全11社中。1社が複数の帯に該当することがあるため合計は11を超えます)を見ると、夜(18〜21時)が9社と突出して多く、次いで早朝(5〜8時)が4社、午前(9〜11時)は3社にとどまりました。
| 時間帯 | 配信したブランド数 |
|---|---|
| 早朝(5〜8時) | 4社 |
| 午前(9〜11時) | 3社 |
| 昼(12〜14時) | 2社 |
| 夕方(15〜17時) | 2社 |
| 夜(18〜21時) | 9社 |
| 深夜(22〜4時) | 0社 |
※11ブランド・4週間の観測にもとづく傾向であり、業界全体の平均値ではありません。
通数ベースで見ても傾向は同じで、最多は19時台の17通、次いで8時台15通、18時台11通、21時台11通、20時台10通、9時台9通でした。定番とされる10時台は、86通中2通しかありませんでした。11社中4社は、観測期間中の定常配信をすべて夜(18〜21時)の1つの帯だけで送っており、時間帯を固定して運用していることがうかがえます。
曜日×時間帯の配信集中度(ブランド数ベースの概況)
※図は曜日別・時間帯別のブランド数実測(本文表のとおり)を掛け合わせた概況を濃淡で示したものであり、マス目ごとのクロス集計の実数は集計していません。
配信頻度の実測。週1.0通〜11.2通、中央値2.1通
定常配信の週あたり通数を1社ずつ実測すると、最小1.0通から最大11.2通まで約11倍の開きがあり、中央値は2.1通でした。
11社の週あたり配信数は多い順に、11.2 / 3.9 / 3.5 / 3.1 / 2.8 / 2.1 / 1.8 / 1.4 / 1.4 / 1.0 / 1.0(単位=通/週)でした。11社中5社は週1.0〜1.8通、残り6社は週2.1通以上で運用しています。週11.2通の1社は例外的に多く、この1社が定常配信86通の47%を占めています。
配信頻度が違うブランドほど、配信するネタの型の構成も異なる傾向があります。型の分類についてはメルマガの配信内容を型で分類した前回記事で扱っています。
最初は火曜が最多に見えた理由
最初の集計では火曜が配信の最多曜日に見えましたが、これは実態ではなく集計方法の誤りによるものでした。
正体は、2026年7月14日の14時台に8ブランドが同時刻にメールを送ってきた、購読登録直後のウェルカムメールでした。登録操作をした曜日・時刻がそのまま「配信曜日」として計上されていたのです。各ブランドの初回メールを除いて定常配信だけで数え直すと、火曜の優位は消えました(前掲の曜日別の表のとおりです)。
この経験からの学びは、他社観察のデータには「観測者自身の行動の痕跡」が混ざりうるという点です。登録・解約・問い合わせへの自動返信など、観測の副産物を数える前に除く前処理を決めておく必要があります。
「最適な配信時刻」を探す前にやるべきこと
配信時刻がばらついている状態では、どの時刻が良いかを比較する以前に、号の中身の良し悪しすら判定できません。
時刻・曜日・号の種類のうち複数が同時に変動していると、開封率や反応の違いがどの要因によるものか切り分けられなくなるためです。最適な時刻を探すより先に、比較できる状態、つまり時刻を固定し、変えるときは複数週分まとめて揃えて変える設計を作るほうが早いという考え方です。
何を比較し、何を指標として見るかという設計は、オウンドメディア全体のKPI設計とも共通します。詳しくはオウンドメディアのKPI設計で扱っています。
自社ECの運用判断。時刻を先に固定した理由
自社EC(dott-miso.shop)のメルマガは、2026年7月28日に配信時刻を17時に固定しています。
理由は「最適時刻がわかったから」ではありません。それまでの配信実績が19時34分・19時30分・18時とばらついており、号の種類(読みもの/レシピ/商品案内/ストーリー)ごとの効果を比較できなかったためです。
運用は週4通の編成で、月曜を読みもの、水曜をレシピ、金曜を商品・お知らせ、日曜をストーリーに割り当てています。セール・クーポンの訴求は金曜号だけに絞り、週1回を上限にしています。
まとめ:時刻の最適解より先に、比較できる状態をつくる
「最適な配信曜日・時間帯」は、他社の実測データからそのまま輸入できる正解ではなく、自社の号の種類や比較設計を先に整えたうえで検証すべき問題です。
11ブランド・4週間という限られた母数では、金曜・夜への集中という傾向は見えても、それが自社に当てはまるとは限りません。時刻を固定し、比較できる状態を作ってから自社の読者で検証を回すこと、そして配信タイミングの検証を、コンテンツ運用全体の設計の一部として位置づけることが必要です。
よくある質問
Q1. メルマガは火曜の午前に配信するのが最適ですか?
11ブランド・86通の実測では、曜日別に配信したブランド数は金曜が8社で最多、土曜6社、火曜・水曜・木曜が各5社と続き、火曜が突出しているわけではありませんでした。時間帯別では夜(18〜21時)が9社と最も多く、定番とされる午前(9〜11時)は3社にとどまりました。ただし11ブランド・4週間の観測にもとづく傾向であり、業界全体の平均値ではありません。
Q2. メルマガの配信頻度は週何回が適切ですか?
実測した11ブランドの週あたり配信数は1.0通から11.2通までばらつき、中央値は2.1通でした。11社中5社が週1.0〜1.8通、残り6社が週2.1通以上で運用しており、単一の正解回数は見当たりませんでした。自社では号の種類ごとに役割を分け、週4通で運用しています。
Q3. メルマガの配信タイミングを決める前に何をすればよいですか?
配信時刻を一定期間固定し、号の中身ごとの効果を比較できる状態を作ることです。自社では配信実績が19時34分・19時30分・18時とばらついていたため、2026年7月28日に配信時刻を17時に固定し、比較できる設計に変更しました。
