「AI検索で流入が減った」という危機感の実際は?
「AI検索対策しないとこの時代やばい!SEOがもう死んだ!」と、SNSのタイムラインが賑わっています。これをみて、「うちのサイトも流入が止まっている…」と危機感を感じた方はいませんか?
実際のところは、冷静に見極める必要があります。
AI検索由来の流入減少に対する不安の多くは、検索全体で一様に起きているのではなく、「情報収集を目的にした検索」に集中して起きています。発注を検討している人の検索行動は、それほど大きく変わっていません。
たしかに、「検索結果の上にAIによる要約が表示されるようになり、記事へのクリックが減っている」という声が中小企業の経営者・担当者の間で増えていますし、この危機感自体は正しい反応です。しかし、次に必要なのは「何を新しく足すか」ではなく「何をやめて、何を続けるか」という配分の判断です。テクニックを追加する形で対処しようとすると、効果の出ない打ち手を重ねることになりかねません。
この記事では、自社の実測データをもとに、AI検索対策を「新しい施策」としてではなく「限られたコンテンツ制作の時間と費用を、どの検索意図に配分するか」という経営判断として整理します。
検索意図によって、AI検索に「削られやすさ」は違う
検索する人の目的は、情報収集・比較検討・購買発注という段階に分かれます。AIによる要約は情報収集段階の検索と相性が良く、発注を決めるための検索では、人間が自分の状況にあてはめて比較・確認したいという欲求が残ります。
具体的には次の3段階です。
- ①情報収集:「〜とは」「〜のやり方」といった、単一の正解に近い答えを求める学習目的の検索
- ②比較検討:「A社 B社 比較」「〜の選び方」といった、複数の選択肢を並べて選定したい検索
- ③購買・発注:「〜 外注」「〜 代行」「〜 料金」といった、発注に近い意思決定段階の検索
①の情報収集検索は、AIの要約と最も相性の良い領域です。検索結果を何ページも見て回るより、要約を1つ読むほうが効率的だからです。一方で③の購買・発注検索は、金額・実績・体制など複数の条件を自分の会社の状況にあてはめて比較したいという欲求が強く、要約1つだけで意思決定を終える人は多くないと考えられます。中小企業のオウンドメディアが「情報収集記事」に偏って量産されてきた場合、AI検索の影響を受けやすい記事に投資が集中していた、という見立てになります。
この検索意図の区分は、記事のKPI設計にもそのまま関わってきます。表示回数やクリックといった検索結果内の指標だけでなく、どの意図の検索から来たセッションがどこまで進んだかを分けて追うことが、以下で解説するオウンドメディアのKPI設計とも重なる考え方です。
関連記事 オウンドメディアのKPI設計 経営判断に使える先行指標と遅行指標の順序検索意図ごとに、張り続ける面と減らす面を分ける
「AI検索に削られやすいか」と「自社が投資すべきか」の2軸で整理すると、情報収集記事の量産から撤退し、購買・発注検索の受け皿を強化するという配分の見直しが必要な企業が多いとわかります。
縦軸をAIの要約に吸収されやすいか、横軸を自社が投資すべきかとして4象限に分けると、3つの検索意図はそれぞれ違う場所に位置づけられます。
検索意図別の意思決定マトリクス(AI検索での削られやすさ × 自社が投資すべきか)
右下の購買・発注検索は、AIの要約だけで完結しにくく、かつ自社が投資すべき優先度も高い領域です。料金・実績・体制の情報を厚くした受け皿ページを強化することが、最も投資効率の見込める打ち手になります。右上の比較検討は、AIの要約に吸収されやすい一方で自社にとって重要度も高いため、自社サイト単独で戦うより、比較記事やレビューを書く第三者メディアに取り上げられることを狙うほうが現実的です。左上の情報収集は、要約に吸収されやすくかつ自社の商流にも直結しにくいため、新規記事の量産を止める判断がしやすい領域になります。
【実測】学習目的の検索は減り、発注目的の検索は生きている
2026年8月にキーワード調査ツールで確認したところ、コンテンツマーケティング関連カテゴリ全体の月間検索数は前年比30〜50%減っていた一方で、発注意図の強い語の検索数は維持されていました。
カテゴリ全体で検索数が落ちていることは、AI検索へのシフトを示唆する動きとして受け止められますが、その内訳を個別のキーワードで見ると様子が変わります。
| キーワード | 月間検索数 | 参考CPC | 競合性 |
|---|---|---|---|
| コンテンツマーケティング関連カテゴリ全体 | 前年比 -30〜-50% | - | - |
| オウンドメディア 運用代行 | 390回/月 | 約$19.92 | 7 |
| shopify コンテンツマーケティング | 0回/月 | - | - |
※自社のキーワード調査ツールでの実測(2026年8月7日時点)。検索数・CPC・競合性は業界やツールの母集団により変動するため、あくまで目安としてご覧ください。
「オウンドメディア 運用代行」のような、発注に近い語の検索数はカテゴリ全体の落ち込みほど下がっていません。CPCが1クリック約20ドルという水準も、発注を検討している人が検索している語であることを裏づけています。一方で「shopify コンテンツマーケティング」のように、事業者名とテーマを組み合わせた語は検索数がほぼゼロでした。これは自社ドメインでの新規指名検索の獲得だけを狙う記事戦略が、そもそも規模の乏しい市場に投資している可能性を示しています。減っているのは学習者の検索であり、発注者の検索は生きている、という構造がここに表れています。
そもそもAI検索由来の流入を正しく数えられているのか?という論点
「AI検索からの流入が減った、増えた」という議論の前に、多くのアクセス解析は今もAI検索由来の流入を正しく数えられていない場合があります。
2026年8月、自社が運営する2サイトのGA4で、GA4が新設した「AI Assistant」チャネル(AI系流入を計測するための新チャネル)を検証しました。直近12か月でAI系流入と推定できるセッションは合計230件でしたが、このうち新チャネルの「AI Assistant」として正しく分類されていたのはわずか6件(2.6%)にとどまりました。残りは、参照元のmedium(参照元の種別情報)が空になって「Unassigned(未割当)」に分類されるもの、referral経由として「Referral」チャネルに散らばるもの、さらにopenai / organicという参照元の36件は「Organic Search(通常のオーガニック検索)」に混ざり込んでいました。
この実測からの示唆: 「AI検索からの流入は少ない」という数字を標準レポートだけで判断すると、実際には97%以上が別チャネルに散らばって数え漏れている可能性があります。自社のGA4でチャネル振り分けの実態を一度確認してから、増減の議論に進むことをおすすめします。
自社サイトを磨くより、第三者に語らせるほうが速い
llms.txtの設置有無と、生成AIからの引用頻度には統計的に有意な相関が確認されておらず、Googleはそもそもllms.txtを読み込んで検索やAI機能に利用しているわけではないと述べています(出典: Google Search Central「Optimizing your website for generative AI features on Google Search」)。一方、生成AIに引用されやすいドメインは自社サイトでなく第三者メディアに偏っており、そこへの言及を増やすほうが即効性があります。
自社では2026年8月、llms.txtを自社サイトに設置しない判断をしました。理由は、30万ドメイン規模の統計分析で、llms.txtの設置有無と生成AIからの引用頻度のあいだに有意な相関が確認されなかったためです。日本国内で生成AIの回答に引用されやすいドメインの上位には、YouTube・note.com・Wikipedia・Yahoo!知恵袋といった第三者メディアが並びます。つまり、自社ドメインの技術的な対応を積み増すより、こうした第三者メディアに取り上げられる・言及される状態(アーンドメディア)を増やすほうが、引用される確率への影響は大きいと考えられます。
この「自社サイトを磨くより、第三者に語られる状態を作る」という考え方は、記事制作をどこまで自社で担い、どこから外部の力を借りるかという内製化の設計にも関わってきます。AIライティングガイドラインのように、工程ごとにAIと人の線引きを決めておくことは、限られた制作リソースを情報収集記事の量産から比較検討・購買発注記事へ振り向ける際にも役立ちます。
関連記事 AIライティングガイドラインの作り方 記事制作を工程別にAIと人で線引きする今日から着手できる、AIO対策につながる3点のポイント
新しい施策を追加するのではなく、①情報収集記事の新規量産を止める、②発注検索が生きているキーワードの受け皿ページを強化する、③公開済み記事にLLMO対応を施す、という3つの再配分から着手できます。
- 情報収集系の記事量産を止め、既存記事を棚卸しする。「〜とは」といった学習目的の記事は、AIの要約で完結しやすく、検索数自体も減っていく可能性があります。新規の量産を止め、既存記事は残しつつ更新の優先度を下げる判断が現実的です。
- 発注検索が生きているキーワードの受け皿ページを強化する。「オウンドメディア 運用代行」のような発注意図の語は検索数を維持しており、料金・実績・体制の情報を厚くしたページが受け皿になります。
- 公開済み記事にLLMO対応を施す。自社では2026年8月、既存コラム10本に対して、各H2直下にその段落だけで意味が通る定義リードを置く、記事末にFAQ3問とFAQPage構造化データを画面表示テキストと完全一致させて設置する、最終更新日を可視表示しJSON-LDのdateModifiedも更新する、という3点を必須要件にしました。新規記事を増やす前に、既存記事へのこの対応のほうが着手しやすく、効果も見込みやすいと考えています。
着手前に確認したい3つの問い:
- 公開済み記事のうち、情報収集目的(「〜とは」)と発注目的(「〜 外注」「〜 代行」)はそれぞれ何本あるか
- 発注目的の記事に、料金・実績・体制といった比較材料が十分に載っているか
- 公開済み記事にFAQ構造化データと最終更新日の可視表示が入っているか
AI検索対策は「施策の追加」でなく「配分の見直し」
AIオーバービューへの対応は、新しいSEO施策を積み増すことではなく、限られたコンテンツ制作の時間と費用を、どの検索意図にどれだけ配分するかという経営判断です。
情報収集系の検索は、AIの要約によって今後もクリックされにくくなっていく可能性が高く、そこに記事を量産し続ける戦略は投資効率が下がっていきます。一方で、発注を検討している人の検索は、AIの要約だけで意思決定を終えない性質を持っており、そこに向けたページの整備は引き続き有効です。判断すべきは「AI検索にどう対抗するか」ではなく、「情報収集系にかけていた時間を、比較検討・購買発注系にどれだけ振り向けるか」という配分の設計です。
よくある質問
Q1. AIオーバービューが表示されると、うちのオウンドメディアの記事はもう読まれなくなりますか?
検索意図によって影響の受け方が異なります。「〜とは」といった情報収集目的の検索はAIの要約と相性が良く、クリックされにくくなっていく可能性がありますが、「〜 外注」「〜 代行」といった発注に近い検索は、条件を自分の状況にあてはめて比較したい欲求が強く、AIの要約だけでは完結しにくい性質があります。すべての記事が一様に読まれなくなるわけではなく、検索意図ごとに影響の濃淡があります。
Q2. llms.txtを設置すればAI検索対策になりますか?
自社では2026年8月、llms.txtを設置しない判断をしました。30万ドメイン規模の統計分析で、設置有無と生成AIからの引用頻度に有意な相関が確認されていないためです。むしろ日本国内で生成AIに引用されやすいドメインの上位はYouTube・note.com・Wikipedia・Yahoo!知恵袋といった第三者メディアであり、自社ドメインの技術対応より、第三者に取り上げられる状態を増やすほうが効果を見込みやすいと考えています。
Q3. AI検索対策として、まず何から着手すればよいですか?
新しい施策を追加するより、既存の配分を見直すことから着手できます。具体的には、情報収集系の記事の新規量産を止める、発注検索が生きているキーワードの受け皿ページを強化する、公開済み記事にH2直下の定義リード・FAQ構造化データ・最終更新日の可視化といったLLMO対応を施す、という3点です。
